Les Sang et Or

Jリーグ名古屋グランパスサポの日記です。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

イヴォ・ヴァスティッチのシュート(4)(完)

ピッチ上に目をやると,主審と仙台DFファビアーノとがもめている。
どうやらさっきの笛は,仙台のファールだったようだ。
そして,ファビアーノにこの日2枚目のイエローカード,退場。
判定に納得いかないファビアーノは,主審にクレームをつけ続けて,なかなか出ていかない。

僕たちはその様子を見ながら,ささやきあった。
「今,時計は止まってる。こっちのフリーキックがあって,多分それがラストだ」

不承不承出ていくファビアーノ,名古屋の直接フリーキックで試合再開。
ゴール正面やや左寄り,角度はいいが,直接決めるには距離が少し遠い。
しかし,イヴォならば・・

ボールには,ウェズレイ,藤本,そしてヴァスティッチの3人が寄っていく。
藤本が,ウェズレイの足元にボールをセットするが,しかし藤本は蹴らないだろうということを,僕たちは感じ取っていた。
「最後,イヴォが蹴る」
チームも,観客も,そう決めていたのだ。


僕は,いつかのチリ戦のロスタイムでヴァスティッチが決めたゴールを思い出していた。
  あいつは,絶対に決める。
  あいつは,そういうスペシャルな選手だ。
主審が再開の合図の笛を鳴らした。



藤本が走り込む。直接蹴るか,と見えたタイミングで,ウェズレイが足裏でボールを後方に流す。
そこに,ヴァスティッチがいた。

それは,ここ数試合,ゴール前でフリーキックを取る度に,何度も使ってきたトリックプレーだった。
一度もうまくいったことがなかった。
そして,もう十分に相手チームから研究されていた。

仙台のヴェテランMF森保が,おそらくこのプレーがあることを頭に入れていたであろう俊敏な動きで,ヴァスティッチのシュートをブロックに行く。

今度こそ万事休す。
この土壇場で,こんな無様な形で,終わってしまうとは・・
なんで,よりによってここで選択するプレーが,一回も成功したことのないプレーなんだよ・・
こんなんだったら,イヴォに直接ズドンと蹴らせて外れた方がまだ諦めがついたよ・・


・・・しかし,それで終わりではなかった。


右足のシュート・モーションを途中で止めるヴァスティッチ。アウトサイドの軽やかなタッチで,飛び込んでくる森保をかわすと,そのまま滑らかにドリブルに入る。
その動きは,スローモーションのようだった。

息を呑む僕たち。
そのまま斜めに数メートル進み,ペナルティエリアに入る寸前で,イヴォ・ヴァスティッチはシュートを放った。
地を這う弾道が,GKのニアサイドを破る。

ゴール。

サヨナラゴール。


頭が,真っ白だった。
叫びは,声にならない。涙が,噴き出す。
ゴール裏は,その瞬間「壊れた」。
モッシュ。ダイヴ。
水やビールが空中を飛び交う。
上から降ってくる人を抱き止め,抱きしめる。
感情を制御することは不可能だった。
試合終了を告げるホイッスルは,僕らの耳には届かなかった。


これが,僕がこの目で見たイヴォ・ヴァスティッチの最後のプレーだ。

[追記]
一試合早くヴァスティッチを失う結果になった名古屋は,次の試合,優勝候補ジュビロ磐田とアウェイで対戦。残されたメンバーが奮起し,後半にウェズレイのヘディングで先制。その後,福西のゴールで追いつかれたが,引き分けでゲームを終え,リーグでは2000年1stステージから続いていた対磐田戦の連敗を6で止めた。

その後の名古屋は,1stステージを5勝8分2敗勝ち点23の7位で終了。
ステージ終了後,ベルデニック監督は,彼の戦術では勝ちきれないとして解任された。
クラブは,後任監督として,ブラジル人のネルシーニョを招聘し,チームはブラジル路線への転換を図ることになった。

名古屋を去ったヴァスティッチは・・・。
オーストリア帰国後,彼は,おおかたの予想を裏切って古巣シュトゥルム・グラーツに復帰することなく,金満クラブであるFKオーストリアに入団してしまった。
36歳となった現在は,2部リーグのLASKリンツに移籍し,クラブを1部に昇格させるべく奮闘している。
(了)
スポンサーサイト
  1. 2006/05/12(金) 21:44:55|
  2. グランパス
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:3
<<UEFAチャンピオンズリーグ決勝 バルセロナ2-1アーセナル | ホーム | イヴォ・ヴァスティッチのシュート(3)>>

コメント

以上,長々とお送りしましたが今回で完結です。ナビ杯無視して何いきなり思い出を語り出しとんねんと思われたでしょうが,とち狂ったわけではございません・・・
  1. 2006/05/13(土) 23:52:34 |
  2. URL |
  3. astin #-
  4. [ 編集]

ご苦労様です。
チリ戦のゴールはW杯のゴール集で見たことがありますが、本当に小憎らしいファインゴールだったかと・・・

読んでいくにつれて色々な事を思い出しました。
最後のゴールを狙う様は獲物を仕留めようとする動物の目でした。
洗練された基本的なプレーをするイヴォを教材にした競技者向けのDVDを作製して欲しかったですね。
でもastinさん、松本のデビュー戦は現場に来ていたのですね!
  1. 2006/05/14(日) 01:49:21 |
  2. URL |
  3. クロゴマ #wtcrA5jo
  4. [ 編集]

>クロゴマさん

ありがとうございます。
あの日は,試合開始ギリギリでアルウィンに滑り込んで,後ろの方で見てました。

オーストリアのグラーツ(そう,シュトゥルムのホームタウンです)在住の友人から,つい最近,帰国後の彼の話を教えてもらったので,そのお返しに名古屋在籍時の思い出をつれづれ書いてみました。この話はいつかは必ず文章化しようと思ってたところを,一気にモティベーションが高まったという感じです。
  1. 2006/05/15(月) 11:47:50 |
  2. URL |
  3. astin #-
  4. [ 編集]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://bloodandgold.blog62.fc2.com/tb.php/21-244249f8
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

astin

Author:astin
フットボール?
あんな馬鹿馬鹿しいもの
  シラフで見てられるわけがねえ

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

カレンダー

07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -

月別アーカイブ

カテゴリー

FC2カウンター


無料カウンター

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。